~川北 真詩さんインタビュー ~
話し手 川北 真詩(かわきた まこと) 発達障害 聞き手 殿岡 栄子
今回お話を伺ったのは、海外大学への進学に挑戦し、現在は新たな進路に向けて歩み始めている川北 真詩さんです。インタビューでは、マレーシア留学で経験したこと、日本に戻ってから考えたこと、そしてこれからの目標について率直に語ってくださいました。
川北さんは当初、マレーシアの大学への進学を目指していました。2025年9月に初めてマレーシアへ渡航しましたが、慣れない環境への適応に苦労し、ビザ申請などの手続きを進めることが難しくなりました。現地では精神的に大きな負担を感じ、同年10月頃にいったん日本へ帰国することになったそうです。
その後、再挑戦に向けて選んだのがフィリピンの語学学校でした。川北さんは英語力を高めるためにフィリピンでの学習を選択しました。フィリピンは以前から何度も訪れた経験があり、生活環境にも比較的慣れていたため、マレーシアで最初に経験したような大きな戸惑いは少なく、語学学習は比較的順調に進んだといいます。
2025年12月頃からフィリピンでの語学学習を始め、その後いったん帰国を挟みながら、2026年4月から6月にかけて再びフィリピンで学び、7月の進学に備えました。一方で、この2回目のフィリピン滞在中の後半には、発達障害の治療で使用していた薬が手に入りにくくなったこともあり、集中力や精神面での負担を感じる時期もあったそうです。それでも語学力を高めながら経験を積み、再びマレーシアへの挑戦に向けた準備を重ねていきました。
そして2026年7月、再びマレーシアの大学へ入学し、新たな学生生活をスタートさせました。しかし今回は別の課題に直面します。
継続が難しくなった大きな理由の一つが、自分が思い描いていた「観光学」と、実際に大学で学ぶ内容との間にあったギャップでした。川北さんは高校時代に大学見学などを通して観光学に興味を持ちましたが、実際に大学へ入学してみると、自分がイメージしていた学びと現実のカリキュラムとの間に大きな違いがあることに気づいたそうです。オリエンテーションで履修内容を確認した際に、「自分が本当に学びたい内容ではなかった」と感じたことは、大きな転機となりました。観光学といっても、ホテル業界や観光ビジネスなどさまざまな分野があり、自分の興味や適性との違いが見えてきたといいます。
また、人との距離感の取り方にも苦労したと話してくれました。海外の人と交流すること自体は好きで、これまでも積極的に海外へ出てきましたが、大学生活では友人関係を築くことに悩みました。話しすぎてしまうこともあれば、反対に話しかけることができなくなってしまうこともあり、自分でもコミュニケーションの難しさを感じていたそうです。特に日本人留学生同士の関係を築くことが難しく、それが精神的な負担につながったと振り返っています。
さらに、発達障害による特性や体調管理の難しさも重なりました。生活リズムの維持、朝起きることの難しさ、服薬の管理、アトピーによる体調への影響など、慣れない海外生活の中では多くの課題がありました。同じ15分の徒歩でも、日本では気にならない距離が海外では大きな負担に感じられるなど、環境の変化によるストレスの大きさも実感したそうです。こうした状況が重なり、約1か月で大学生活の継続を断念し、日本へ帰国することになりました。
一方で、今回の経験から得た学びも少なくありませんでした。自分が本当に学びたいことを自分自身で調べ、納得して選択することの大切さ、自分にとって何がストレスとなり、どのような環境なら力を発揮しやすいのかを考えるきっかけになったといいます。また、帰国後には体力づくりにも取り組み始め、自分自身の課題と向き合いながら次の一歩を踏み出しています。
日本に帰国後は、早速次の目標として大学進学を目指し、地元の大学のオープンキャンパスに参加する予定だそうです。大きな挑戦の直後であっても立ち止まることなく、新たな進路に向けて動き始めている姿が印象的でした。
川北さんのお話から伝わってきたのは、今回の経験が単なる失敗ではなく、自分自身を深く知るための大切な機会になったということです。実際に海外へ渡り、悩み、迷いながらも挑戦したからこそ、自分に合う環境や学び方、本当にやりたいことについて考えることができました。遠回りに見える経験であっても、その中で得た気づきは必ず次につながっていく。思い通りにいかなかった経験であっても、その中に次につながる学びがあることを、川北さんのお話は教えてくれました。海外への挑戦や進路変更という大きな決断を経験しながらも、自分自身と向き合い、本当にやりたいことを探し続けている姿は、多くの学生に勇気を与えてくれるのではないでしょうか。
参考記事: 先輩からのメッセージ「違い」が力になる場所へ~川北 真詩さんインタビュー~(情報誌129号2025年12月29日発行)