大学における障害学生受け入れの現状  ~2024調査授業編(概要・方針・定期試験まで)~

殿岡 翼  殿岡 栄子  木藤 宗

  • 今回は昨年実施した「大学における障害学生の受け入れ状況に関する調査2024」の結果から、授業について分析します。調査対象大学821校(大学811校、大学校10校)に対し、回答校数は381校で、回答率は46%でした。なお、日本大学は学部ごとに調査し、2学部が回答しました。前回調査より5校減少しています。
  • 本調査は大学の総意としての回答を求めており、途中まで回答を入力していても大学の総意(決裁)が取れず、最終的な回答に至らなかった大学もあります。このような大学や学生募集停止となった大学は、回答数には含まれていません。
  • ※回答率とは、ある項目の回答数を回答数382(日本大学2学部を含む)で割った数(率・%)です。
  • ※前回比とは、前回と今回の回答率の差(ポイント)を指します。

授業での配慮 概要

  • 授業中に何らかの配慮を行う大学は354校(93%)で、前回比プラス3ポイントでした。
  • 授業の項目別では、一般講義318校(83%、前回比プラス5ポイント)、語学授業163校(43%、前回比プラス4ポイント)、体育実技209校(55%、前回比プラス5ポイント)、実験122校(32%、前回比プラス3ポイント)、実習222校(58%、前回比プラス3ポイント)、発表238校(62%、前回比プラス4ポイント)、定期試験276校(72%、前回比プラス5ポイント)でした。
  • 授業全体として配慮の実施が広がっており、とくに一般講義、体育実技、定期試験で増加が見られます。
  • 一方で、授業形態によって配慮の実施率には差があり、実験や語学授業のように履修上の負担が大きくなりやすい場面でも、参加を支える配慮を確実に実施できる体制づくりが課題です。

 以下、授業・障害別:配慮ありの回答数 率 前回比の順

表1-1 授業配慮
配慮あり
回答数 前回比
授業全体 354校 93% +3ポイント
一般講義 318校 83% +5ポイント
語学授業 163校 43% +4ポイント
体育実技 209校 55% +5ポイント
実験 122校 32% +3ポイント
実習 222校 58% +3ポイント
発表 238校 62% +4ポイント
定期試験 276校 72% +5ポイント

障害別の授業配慮 概要

  • 障害別では、視覚障害173校(45%、前回比プラス3ポイント)、聴覚障害210校(55%、前回比プラス4ポイント)、肢体障害222校(58%、前回比プラス1ポイント)、発達障害244校(64%、前回比プラス3ポイント)、精神障害254校(66%、前回比プラス4ポイント)、内部障害244校(64%、前回比プラス5ポイント)でした。今回初めて調査した知的障害は116校(30%)でした。
  • 多くの障害種別で前回より増加しており、授業配慮の対象が広がっていることがわかります。
  • 一方で、障害種別ごとに必要な配慮の内容は異なるため、学内の窓口と教員の間で情報共有と実施手順を標準化し、学生の申し出から提供までが途切れない運用にすることが課題です。
表1-2 障害別配慮
配慮あり
回答数 前回比
視覚障害 173校 45% +3ポイント
聴覚障害 210校 55% +4ポイント
肢体障害 222校 58% +1ポイント
発達障害 244校 64% +3ポイント
精神障害 254校 66% +4ポイント
内部障害 244校 64% +5ポイント
知的障害 116校 30% +5ポイント

授業全体配慮方針

  • 授業全体の配慮方針では、「配慮内容を教員に依頼」が309校(81%、前回比プラス3ポイント)、「障害学生の履修状況を教員に通知」が277校(73%、前回比プラス4ポイント)、「ガイドラインを作成し、教員に示す」が152校(40%、前回比プラス5ポイント)、「教員の配慮状況を把握」が141校(37%、前回比プラス3ポイント)でした。「その他」は31校(8%、前回比0ポイント)でした。
  • 教員任せではなく、大学として配慮を進めるための仕組みづくりが進んでいることがわかります。
  • 一方で、ガイドラインの整備や配慮状況の把握は、作成・実施で終わらせず、授業担当者が迷わず運用できる具体性と、学期ごとの点検・改善の仕組みを持つことが課題です。

 以下、授業全体配慮方針別:配慮ありの回答数 率 前回比の順

表2 授業全体配慮方針
授業全体配慮方針内容 配慮あり
回答数 前回比
配慮内容を教員に依頼 309校 81% +3ポイント
障害学生履修状況を教員に通知 277校 73% +4ポイント
ガイドライン作成し、教員に示す 152校 40% +5ポイント
教員の配慮状況を把握 141校 37% +3ポイント
その他 31校 8% 0ポイント

一般講義配慮方針

  • 一般講義の配慮では、「座席位置配慮」が305校(80%、前回比プラス4ポイント)、「補助機器の使用を認める」が251校(65%、前回比プラス5ポイント)、「録音機器の使用を認める」が204校(53%、前回比プラス4ポイント)でした。「欠席日数考慮」は76校(20%、前回比プラス4ポイント)でした。「講義に補助者」は119校(31%、前回比プラス1ポイント)、「講義準備に補助者」は34校(9%、前回比プラス1ポイント)でした。
  • 座席や機器利用など、比較的導入しやすい配慮が広がっていることがわかります。
  • 一方で、補助者配置や準備支援など人的支援は依然として限定的であり、必要な学生に確実に届くように、依頼から配置までの学内手順を整理し、提供が滞らない運用にすることが課題です。

 以下、一般講義配慮内容別:配慮ありの回答数 率 前回比の順

表3 一般講義配慮方針
一般講義配慮内容 配慮あり
回答数 前回比
座席位置配慮 305校 80% +4ポイント
補助機器の使用を認める 251校 65% +5ポイント
録音機器の使用を認める 204校 53% +4ポイント
講義に補助者 119校 31% +1ポイント
補助機器・教科書の置き場所を確保 105校 27% +2ポイント
欠席日数考慮 76校 20% +4ポイント
講義ノートをコピー 46校 12% +1ポイント
講義準備に補助者 34校 9% +1ポイント
その他 51校 13% +1ポイント

語学授業配慮方針

  • 語学授業の配慮では、「別の課題を与える」が95校(25%、前回比プラス4ポイント)で最も多く、「補助者をつける」は78校(20%、前回比プラス2ポイント)でした。「別科目履修による代用」は20校(5%、前回比0ポイント)、「特別クラスを編成」は15校(4%、前回比プラス1ポイント)でした。「その他」は60校(4%、前回比マイナス1ポイント)でした。
  • 語学授業で学修継続を支えるための工夫が行われていることがわかります。
  • 一方で、別課題や別科目履修は有効な選択肢になり得る一方、履修可能な学生に対して支援が十分に提供されないまま代替措置に移行してしまうことがないよう、補助者配置や教材・課題の調整を含めて「履修を可能にする配慮」を優先して検討することが課題です。

 以下、語学授業配慮内容別:配慮ありの回答数 率 前回比の順

表4 語学授業配慮方針
語学授業配慮内容 配慮あり
回答数 前回比
別の課題を与える 95校 25% +4ポイント
補助者をつける 78校 20% +2ポイント
別科目履修による代用 20校 5% 0ポイント
特別クラスを編成 15校 4% +1ポイント
その他 60校 4% -1ポイント

体育実技配慮方針

  • 体育実技の配慮では、「見学」が111校(29%、前回比プラス5ポイント)、「内容・種目の変更」が109校(29%、前回比プラス4ポイント)、「レポートによる代用」が90校(24%、前回比プラス4ポイント)でした。「運動器具の工夫」は57校(15%、前回比プラス3ポイント)、「補助者をつける」は50校(13%、前回比プラス1ポイント)でした。「特別クラスを編成」は29校(8%、前回比0ポイント)、「別科目履修による代用」は20校(5%、前回比プラス1ポイント)でした。
  • 見学や代用だけでなく、内容変更や器具の工夫など、取り組みやすい配慮が広がっていることがわかります。
  • 一方で、参加そのものを支える工夫や人的支援が十分とは言いにくいため、まずは種目・ルールの調整や補助者配置などで参加を可能にする方向で検討し、評価方法も含めて授業設計を柔軟に見直すことが課題です。

 以下、体育実技配慮内容別:配慮ありの回答数 率 前回比の順

表5 体育実技配慮方針
体育実技配慮内容 配慮あり
回答数 前回比
見学 111校 29% +5ポイント
内容・種目の変更 109校 29% +4ポイント
レポートによる代用 90校 24% +4ポイント
運動器具の工夫 57校 15% +3ポイント
補助者をつける 50校 13% +1ポイント
特別クラスを編成 29校 8% 0ポイント
別科目履修による代用 20校 5% +1ポイント
その他 41校 11% +1ポイント

実験配慮方針

  • 実験の配慮では、「補助者をつける」が79校(21%、前回比プラス1ポイント)、「使用器具の工夫」が53校(14%、前回比プラス4ポイント)でした。「見学」は34校(9%、前回比プラス1ポイント)、「別の課題を与える」は32校(8%、前回比プラス2ポイント)、「レポートによる代用」は30校(8%、前回比プラス2ポイント)でした。「別科目履修による代用」は4校(1%、前回比0ポイント)でした。
  • 実験では人的支援を中心に、一定の配慮が行われていることがわかります。
  • 一方で、器具や手順の工夫などの環境面の調整と、参加を前提とした支援の組み立てが十分に広がっているとは言いにくいため、見学や代用に偏らず、参加しやすい実施方法を学内で共有し、担当教員の負担を減らしながら継続的に運用できる体制を整えることが課題です。

 以下、実験配慮内容別:配慮ありの回答数 率 前回比の順

表6 実験配慮方針
実験配慮内容 配慮あり
回答数 前回比
補助者をつける 79校 21% +1ポイント
使用器具の工夫 53校 14% +4ポイント
見学 34校 9% +1ポイント
別の課題を与える 32校 8% +2ポイント
レポートによる代用 30校 8% +2ポイント
別科目履修による代用 4校 1% 0ポイント
その他 32校 8% +1ポイント

実習配慮方針

  • 実習の配慮では、「実習先に配慮依頼」が203校(53%、前回比プラス4ポイント)でした。「実習先のあっせん」は82校(21%、前回比プラス3ポイント)、「補助者をつける」は60校(16%、前回比プラス1ポイント)、「使用器具の工夫」は46校(12%、前回比プラス2ポイント)でした。「別の課題を与える」は31校(8%、前回比プラス1ポイント)、「見学」は21校(5%、前回比0ポイント)、「レポートによる代用」は17校(4%、前回比プラス1ポイント)、「別科目履修による代用」は2校(1%、前回比マイナス1ポイント)でした。
  • 実習では学外機関との調整を含め、大学が関与して配慮を進めていることがわかります。
  • 一方で、実習は受け入れ先の体制に左右されやすく、学生によって支援の質に差が生じやすいため、配慮依頼の文面・手順の統一、事前確認、実施後のフォローまでを含めて大学が責任を持って調整し、支援が途切れない運用にすることが課題です。

 以下、実習配慮内容別:配慮ありの回答数 率 前回比の順

表6 実習配慮方針
実習配慮内容 配慮あり
回答 前回比
実習先に配慮依頼 203校 53% +4ポイント
実習先のあっせん 82校 21% +3ポイント
補助者をつける 60校 16% +1ポイント
使用器具の工夫 46校 12% +2ポイント
別の課題を与える 31校 8% +1ポイント
見学 21校 5% 0ポイント
レポートによる代用 17校 4% 1ポイント
別科目履修による代用 2校 1% -1ポイント
その他 32校 8% +1ポイント

発表配慮方針

  • 発表の配慮では、「補助機器の使用を認める」が182校(48%、前回比プラス4ポイント)でした。「別の課題を与える」は82校(21%、前回比プラス2ポイント)、「補助者をつける」は79校(21%、前回比0ポイント)でした。「別科目履修による代用」は6校(2%、前回比0ポイント)、「その他」は96校(25%、前回比プラス3ポイント)でした。
  • 補助機器利用などを通じて、発表方法の多様化が一定程度進んでいることがわかります。
  • 一方で、発表場面では人的支援や方法変更が必要になるケースもあるため、別課題への切り替えだけで済ませず、評価方法と発表手段を切り分けて整理し、学習目標を保ちながら参加を可能にする配慮を選べるようにすることが課題です。

 以下、発表配慮内容別:配慮ありの回答数 率 前回比の順

表7 発表配慮方針
発表配慮内容 配慮あり
回答数 前回比
補助機器の使用を認める 182校 48% +4ポイント
別の課題を与える 82校 21% +2ポイント
補助者をつける 79校 21% 0ポイント
別科目履修による代用 6校 2% 0ポイント
その他 96校 25% +3ポイント

定期試験方針

  • 定期試験で配慮を行う大学は276校(72%、前回比プラス5ポイント)でした。配慮方針では、「大学と本人との相談」が226校(59%、前回比プラス6ポイント)、「履修科目教員と本人との相談」が160校(42%、前回比プラス4ポイント)でした。「大学で一定の基準を設ける」は36校(9%、前回比プラス1ポイント)、「その他」は24校(6%、前回比0ポイント)でした。
  • 相談を通じて配慮を進める大学が増えており、定期試験でも対応が広がっていることがわかります。
  • 一方で、定期試験は成績評価に直結するため、個別対応に依存しすぎると科目や教員による差が生じやすくなります。公平性と合理的配慮を両立させるために、大学としての基準や手続き、学内共有の仕組みを整え、必要なときに確実に実施できる体制を固めることが課題です。

 以下、定期試験配慮内容別:配慮ありの回答数 率 前回比の順

表8 定期試験配慮方針
定期試験配慮内容 配慮あり
回答数 前回比
大学と本人との相談 226校 59% +6ポイント
履修科目教員と本人との相談 160校 42% +4ポイント
大学で一定の基準を設ける 36校 9% +1ポイント
その他 24校 6% 0ポイント