先輩からのメッセージ わたしの大学生活:楽しい4割、厳しい6割

~川㞍 浩史(かわじり ひろふみ)さんインタビュー~
殿岡 栄子


 川㞍さんは沖縄県糸満市に在住しており、大学進学を決意されたのは高校2年生の終わり頃、3月のことでした。担任の先生に進路を尋ねられた際に「大学に行きます」と答えたことで、進学が本格的に決まったそうです。
 進学準備では、一般入試かAO入試かを検討し、最終的には書類選考と面接のみで行われるAO入試を選択しました。
 受験で最も苦労されたのは、志願理由書と自己PR文の作成でした。提出までに50回以上書き直し、先生から厳しい指摘を受けることも多く、時にはゴミ箱に捨てられたり、赤ペンでバツを付けられたりしたそうです。そんな苦労の末、一次試験に合格しましたが、発表日を忘れて寝ていたところ、先生からの「Congratulation」というメールで合格を知ったそうです。周囲からは「落ちる」と思われていたため、合格の知らせには驚きつつも、冷静に面接の準備を始めました。練習は4回ほど行いました。しかし当日は練習してきた内容についてまったく質問されなかったため、聞かれたことに対して即座に(5秒以内に)答えることと、思ったことを正直に答えることに気を付けて臨まれたそうです。
 大学では総合文化学部の人間福祉学科社会福祉専攻に所属されています。入学後は授業中に代筆サポートを受けていましたが、2年生になると職員の交代により支援体制が不安定になり、支援が受けられなくなりました。大学側からは「甘え」と見なされ、合理的配慮が否定されることもあったそうです。友人に支援を頼むと、その友人まで注意を受けるため、支援を依頼した事実を伏せて協力してもらうなど、工夫を重ねていたとのことです。
 大学との関係は良好とは言えず、特に3年生の社会福祉実習では、全国障害学生支援センターに相談して大学との話し合いを重ねましたが、大学の対応は非常に厳しかったそうです。加えて、車いすを使用していることから「何もしていない」と言われることがあり、それが怖くて積極的に活動に参加するようになったとのことです。
 活動としては、宜野湾市と提携した「長寿大学」の運営や、ひとり親家庭の学習支援サークルの副代表を務めるなど、多岐にわたります。卒業式では学科ごとの卒業証書授与式の進行主任も担当され、オープンキャンパスのアルバイトにも参加されました。
 大学生活については「楽しい4割、厳しい6割」と振り返られています。厳しさの多くは大学や同期、サークル内での人間関係によるものでしたが、支えとなったのは友人2名と1つ上の学年の先輩たちだったそうです。精神的に辛い時には「大丈夫よ」「深呼吸して」と励まされ、遊びに誘ってもらうことで気持ちを保つことができたと語られています。
 現在は、全国障害学生支援センターの運営スタッフとして、障害学生交流会の副担当や情報誌の校正業務を担当されています。今後は同センターで、相談業務にも関わる予定とのことです。
 最後に、今の学生たちへのメッセージとして、障害について自分自身がしっかりと把握し、大学と対話を重ねることの重要性を語られました。障害者差別解消法の施行により、大学の合理的配慮が義務化されました。学生たちには、大学と積極的に話し合いを持つことが大切だと述べられています。