情報誌エッセイ:徒然なるままに 第1回:最近取り組んでいること(障害のある人の医療)

瀬戸山陽子


 みなさま、こんにちは。全国障害学生支援センターの情報誌を見に来てくださってありがとうございます。情報誌担当の瀬戸山です。2025年7月から情報誌がオンライン化され、今回は記念すべき第1回目となります。オンライン化を記念して、記事を書かせていただくことになりました。日々取り組んでいることや感じていることを、少しずつ書いていきたいと思います。

 私は現在、都内の医療系単科大学に所属しています。私自身も看護師で、日々の仕事は看護学生や医学生の教育に携わりながら、テーマを決めて研究を行うことです。なかでもいま一番関心のあるテーマは、「障害のある人の医療」です。

 アメリカでは2000年代から既に、障害のある人は十分な医療サービスが受けられていない可能性があるということが指摘されてきています(US Department of Health and Human Services, 2009)。また、これまでの研究から、障害のある人は障害のない人と比べて、がんの検診の受検率が低いことや標準治療が行われないことが多いこと、検査を省略されること、また、新しい治療を試すチャンスでもある臨床試験・治験への参加が障害を理由に制限されることが分かっています。(Iezzoni, 2020; Agaronnik, 2025)。さらに障害のある人に障害のない人と同じ質の医療を提供することに自信がある医師は40.7%にとどまる(Iezzoni, 2021)という驚くべき研究結果もありました。

 日本でも、障害当事者の方が代表を務められている株式会社ミライロが行った障害のある人の医療体験の調査報告が公表されています。そこには例えばこのような内容が挙げられています(株式会社ミライロ, 2018)。

 このようなことが起きてしまっている背景はとても複雑ですが、その一つに、医療者に障害のある人に関する知識やスキルの不足があります。私自身も自分の看護学生時代を振り返ってみると、教科書に載っている患者さんの事例は障害のない人が病気になるパターンが圧倒的に多かったことを思い出します。つまり、もともと障害と共に生きている人が、障害とは別の疾患にかかった時にどうするかを学ぶ機会が、ほとんどなかったのです。

 この問題は、「障害のある人の医療アクセスの課題」と呼ばれます。医療は、日々の生活に欠かせない社会のインフラですが、障害の有無によって医療へのアクセスに違いが生まれているとしたら、それは大きな社会の問題です。

 まだまだこの話は勉強し始めたばかりなのですが、医療系大学に勤めて将来医療者になる学生たちにかかわる立場として、また研究をする者としても、この問題は色々な資料や当事者の方の声から学びながら、どうしていったらよいかを考えていきたいと思っています。