先輩からのメッセージ 思いやりの気持ちを大切に

箕輪 順太(みのわ じゅんた)
桜美林大学 リベラルアーツ学部1年
肢体障害

写真:箕輪 順太さん
箕輪 順太さん

117号 2022年10月1日発行 より


はじめに

 私の名前は箕輪順太です。私は生まれつき身体に障害を持っていて、電動車いすを使って生活しています。脳性まひのアテトーゼ型で、緊張で手足が勝手に動いてしまったり、足がつったりしてしまうことがよくあります。小学校と中学校は地域の学校に通っていて、高校は特別支援学校に通っていました。今は桜美林大学の1年生です。学群はリベラルアーツ学群で、人文領域です。リベラルアーツ学群では様々な勉強をしています。私は心理学を学ぼうと思っていますが、他にも宗教や物理なども学べます。卒業後の職業としては教師や心理士などがあります。

小学校・中学校

 小中は地域の学校に通っていました。小学校の頃は何年かに1回、足の調子が悪くなって緊張が強まっていましたが、何とかやり過ごしてきました。しかし、中学校の頃は足の緊張が強くなってしまい、学校に行けない時期がありました。寝ても覚めても足が痛い状況です。そのため、ITB療法というものを使って緊張を和らげました。ITB療法とは、手術でお腹にポンプを埋め込み、そこから緊張をほぐす薬を体に流すという治療法です。3か月に1回くらいポンプに薬を補充します。それによって緊張を和らげることができ、痛みもなくなりました。治療は辛かったですが、身体の調子を整えるいい機会になりました。

高校生活

 高校では特別支援学校に通っていました。なぜ特別支援学校に行こうと思ったかというと、身体にあまり負担をかけずに学校に通いたいと思ったからです。また、負担をかけない身体の使い方も学校で学ぼうと思っていました。もう一つの理由は、学校に見学に行った時に生徒がとても楽しそうに活動していて、自分も輪に加わりたいと思ったからです。
 高校では生徒会副会長をやっていました。生徒会活動は、1年生のうちはわからないことだらけで、先輩たちに教えてもらいながら活動していました。3年生になってからは自分から話し合いを引っ張っていくようにしました。
 そして3年生の時、「横浜子ども会議」に参加しました。「横浜子ども会議」とは、横浜市主催の子どもが主体となっていじめを未然に防止する取り組みです。この時の議題は、「誰にとっても過ごしやすい学校について」でした。私は、学校で話し合った内容を学校の代表として横浜こども会議で発表しました。
 特別支援学校で学んだことはもう一つあります。それはコミュニケーションについてです。特別支援学校には、言葉以外の方法でコミュニケーションを取る人もいます。最初は戸惑いましたが、だんだんとコミュニケーションの取り方に慣れていきました。私は周囲の人と表情やしぐさを見てコミュニケーションを取ることを通して、次第に心理学に興味を持つようになりました。

大学に行こうと思った理由

 私がなぜ大学に行こうと思ったかというと、将来のためにもっと勉強したいと思ったからです。私は心理学に興味があり、将来は心理面に関する仕事をしたいと思っています。私は小さい頃から人に助けてもらうことが多く、自分から人を助ける機会は少なかったです。そのため、今度は自分も人の役に立ちたいと考えました。何ができるか考えた時に、身体面で役に立つことは難しそうだったので心理面で役に立とうと思いました。そして自分は英語や文化にも興味があり、それが学べる桜美林大学を志望しました。また、桜美林大学は留学生も多く、違う文化的背景を持っている人と話したいと思ったのも、この大学を選んだ理由の一つです。

大学入試

 大学を受験するためにやっていたことが2つあります。ひとつは高卒認定試験です。特別支援学校だと取れない単位があるので、高卒認定試験を受けることにしました。勉強は学校で習っていないことが多く難しかったですが、私は無事合格することが出来ました。もう一つは英検2級の取得です。これは直接的に入試に有利になるというわけではありませんが、受験しました。2級は難しく、3回目で合格することが出来ました。この経験により自分の勉強方法をよく考えるきっかけになりました。
 大学入試は「総合型」で受験しました。「総合型」とは面接やレポートによって合否を判断する入試です。私の場合は一次が書類提出で、二次が面接でした。なぜ「総合型」入試にしたかというと、筆記の試験よりも話したり文章を作ったりする方が自分に向いていると思ったからです。私は自分で文字を書くことが難しいので、試験では代筆やパソコンで対応しました。他の大学にもこのような制度はあると思うので、受験しようと思っている方は調べてみてください。入試の時には、提出する文章を何度も学校の先生や親に見てもらいました。また、大学が主催する企画やオープンキャンパスに何度も参加しました。そうすることで、大学側にやる気をアピールできるからです。試験の対策としては面接練習や読書などを行いました。先生や親に面接練習に付き合ってもらったり、自分で撮った面接練習の映像を見て改善点を見つけたりしました。

大学で学んでいること

 現在はまだ1年生なので必修科目を多くとっていますが、2、3年生になったら心理学を専攻しようと思っています。現時点では心理学概論という心理学の基礎を学んでいますが、将来的には心理学を主専攻にする計画です。また、文化についても学ぼうと考えています。文化を知って、相手に寄り添うことが大切だと思っているからです。さらに、桜美林大学では必須科目としてキリスト教入門という科目や、英語の授業などもあります。1年生の春学期では、半分ほどが必須科目になっています。桜美林大学の思想や目標に基づいて設定されている科目も多いです。例えば、桜美林大学はキリスト教の学校なので、キリスト教入門があったり、国際的に活躍できる存在になるための英語コアという科目もあったりします。第二外国語として、フランス語もとっています。フランス語は初めて習うので難しいですが、英語と似ている部分もあり、理解しやすいです。
 大学では横浜市の制度を使って、ヘルパーさんについてもらっています。しかし、実際はなかなかヘルパーさんが見つからないというのが現実です。大学支援のサービスは賃金が安いからです。そのためヘルパーさんが見つかるまでは、母について行ってもらいました。このように今の支援制度は問題があるので、大学支援の賃金をもっと上げるべきだと私は思います。ヘルパー制度を使って大学に行く障害のある人がもっと増えれば、制度も変わっていくのではないでしょうか。

課外活動

 課外活動として、私はボッチャの活動と車いすテニスの活動を行っています。どちらも横浜ラポールという障害者活動施設で活動を行っています。ボッチャは特別支援学校の卒業生や在校生、他の学校に通っている人などと行っています。これは、高校時代に特別支援学校の同級生に誘われて始めました。ボッチャは障害者スポーツで、カーリングとよく似ています。まず白いボールを投げてそれを的にした後、2チームもしくは個人でボールを投げて、的に近づけるというゲームです。私は大会にも何度か出たことがあります。続けていくうちにだんだんうまくなっていって、より楽しくなりました。
 テニスの活動は小学生の頃からやっています。障害のある友達同士で活動を始めていました。ちなみにこの活動のコーチの一人は桜美林大学卒業生です。最近はコロナの影響もあり、あまり活動ができていないのですが、これからも活動を続けていきたいです。

障害学生支援センターで活動を始めたきっかけ

 私はボランティア活動必須の授業を受講していたため、ボランティア活動を探していました。障害学生支援センターでの活動を選んだ理由は、自分と同じように障害がある人にお話を伺ってみたかったからです。今まで特別支援学校に通っていて、同世代の障害のある方とは関わってきましたが、年上の障害のある方とはあまりかかわったことがありませんでした。そこでそのような方にお話を聞きたいと思い、活動に参加しました。

ボランティア活動で学んだこと

 私はこのボランティア活動で、さまざまなことを学びました。センターの方から「わからないことがあれば何でも聞いてください」と言われましたが、最初は躊躇してしまい聞くことが出来ませんでした。しかし活動を続けていくうちに、自分から積極的に質問が出来るようになってきました。またボランティアの内容だけではなく、大学についての知識や障害のある人に関する考えもお聞きすることが出来ました。センターの方は、障害のある方やホームレスの方など社会的に弱い立場にある人を、この社会は、見えないところに追いやっているのではないかとおっしゃっていました。自分もそう思います。だからこそ、このような障害のある方が主体の活動が増えていって、誰もが自分は必要とされていると思えるような社会になっていくといいなと思いました。ボランティア活動は、授業が終わっても続けていこうと思っています。なぜなら自分と同じように障害を持っている方と知り合えて、これからもたくさんお話を伺いながらお役に立ちたいと思っているからです。

終わりに

 私は、高校生活や大学生活を通してさまざまなことを学んできました。そのなかで共通していることは、人のことを考えるということです。これからも思いやりの気持ちを持って、相手の気持ちをよく考えて接していきたいです。

写真:センターでのボランティアの様子
センターでのボランティアの様子